口座のまえに

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法令と公表資料からの写しです。
体験や成績は書いていません。

守られ方が違う二つの口座

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銀行にお金を置くことと、証券会社にお金を置くことは、守られ方の仕組みが違います。どちらの説明にも1,000万円という数字が出てきますが、意味は同じではありません。法令と公表資料に書いてあることだけを、出どころを付けて並べます。

銀行は保険でまかなう

銀行や信用金庫などが破綻したとき、預金者を守るのは預金保険という保険の仕組みです。預金保険法第54条第2項は、保険金の額を「保険基準額」までとすると定めています。

その保険基準額は、預金保険法施行令第6条の3で「千万円」と決められています。金融庁の預金保険制度のページも、同じ数字を説明しています。

一般預金等は預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算して元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護される、という書き方です(fsa.go.jp/policy/payoff/)。

例外もあります。預金保険法第51条の2第1項は、決済に使えること、いつでも払い戻しを請求できること、利息が付かないこと、の三つをすべて満たす預金を「決済用預金」と呼んでいます。

当座預金や利息の付かない普通預金がこれにあたります。決済用預金については、同法第54条の2第1項が元本の額に相当する金額を保険金とする、と定めています。ここには上限の話が出てきません。

一方で外貨預金は、同法第51条第1項の「一般預金等」の定義から外されています。

証券は分けて置く

証券会社の側には、預金保険にあたる保険はありません。かわりに置かれているのが分別管理です。金融商品取引法第43条の2は、そのまま「(分別管理)」という見出しが付いた条文です。

第1項は、顧客から預かった有価証券を、内閣府令で定める方法により、自己の固有財産と分別して管理しなければならない、と定めています。固有財産とは、その会社自身のお金や資産のことです。

第2項は金銭の扱いで、業務をやめた場合に顧客へ返すべき額に相当する金銭を、国内の信託会社等に信託しなければならない、としています。信託とは、決められた目的のために別の会社へ預けて管理してもらう仕組みのことです。

第3項では、この管理の状況について、定期に公認会計士または監査法人の監査を受けなければならない、とも定めています。会社の財布と客の財布を分け、外から確かめる。条文が求めているのはその形です。

分けきれなかったときの基金

分別管理は法律上の義務ですが、守られなかった場合まで条文が結果を約束しているわけではありません。そのときのために置かれているのが投資者保護基金です。

金融商品取引法第79条の27第1項は、金融商品取引業者(政令で定める金融商品取引業者を除く)は、いずれか一の基金にその会員として加入しなければならない、と定めています。

除かれる業者がいることは、条文の括弧書きに書かれています。

同法第79条の56第1項は、基金が「一般顧客」の請求に基づいて、円滑な弁済が困難と認められる債権について支払を行うものとする、としています。

一般顧客の意味は同法第79条の20第1項にあり、適格機関投資家や国、地方公共団体などは除かれています。

支払の上限は、同法第79条の57第3項が「政令で定める金額」とし、金融商品取引法施行令第18条の12(基金による支払の最高限度額)が「千万円」と定めています。

日本投資者保護基金も、補償は1人あたり合計1,000万円までを上限に金銭で行うと公表しています(jipf.or.jp/qa/)。同基金は、相場の値下がりによる損失や発行体の破綻による不払いは対象外だ、とも記しています。

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同じ数字、違う役割

二つの1,000万円は、出番が違います。

預金保険の1,000万円は、預金保険法第54条第2項の言葉どおり、保護される元本の線引きそのものです。

一般預金等がこの額を超えていれば、超えた分は破綻した金融機関の財産の状況に応じた扱いになる、と金融庁のページは説明しています。破綻が起きれば必ず関係してくる数字です。

証券会社側の1,000万円は、金融商品取引法施行令第18条の12にあるとおり、基金が支払う金額の最高限度額です。

前提として、金融商品取引法第43条の2の分別管理が行われていれば、顧客の資産は会社の財産と分けて置かれています。基金の出番は、その分別管理が果たされず返還が滞ったときに限られます。

日本投資者保護基金も、証券会社が適切に分別管理していれば補償は行われないという趣旨を公表しています。

線引きの数字と、最後の受け皿の数字。額が同じでも、どこに置かれた数字なのかが違います。

自分で確かめる順番

ここまでは制度の形の話です。自分の口座がどれにあたるかは、別に確かめる必要があります。

まず銀行側です。手元の口座が利息の付く普通預金や定期預金なら、預金保険法第51条第1項の一般預金等にあたり、第54条第2項の保険基準額の対象になります。

外貨預金は、第51条第1項の括弧書き「外貨預金その他政令で定める預金等を除く」により、一般預金等から除かれています。金融庁と預金保険機構の説明では、預金は預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算されます。

同じ銀行の支店を分けても、合算という扱いは変わりません。

次に証券側です。第79条の27第1項は、政令で定める業者を除いて、基金への加入を義務としています。どの基金の会員かは、各社の会社概要や契約締結前交付書面で確かめられます。

分別管理の監査は第43条の2第3項に定められており、その結果を各社が資料で示すことがあります。

なお、銀行の窓口で買った投資信託は預金ではありません。預金保険法第51条第1項の一般預金等には含まれず、預金保険の保険金の対象にはなりません。どの制度の下にあるかは、置いた場所ではなく商品ごとに分かれています。

預けた先が倒れたとき、根拠となる条文はどれか

表は4行2列。列は「置き場所と種類」「根拠と限度額」。 行1/決済用預金(利息が付かず、いつでも払い戻せて、決済に使える預金。当座預金など)/預金保険法第51条の2第1項が三要件を定義。保険金の額は同法第54条の2第1項で「元本の額に相当する金額」=上限の定めなし。 行2/一般預金等(利息の付く普通預金・定期預金など)/預金保険法第54条第2項で保険基準額まで。保険基準額は預金保険法施行令第6条の3により1,000万円(+対応する元本に係る利息等)。預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算(金融庁「預金保険制度」)。 行3/外貨預金/預金保険法第51条第1項の「一般預金等」の定義から除外(括弧書き「外貨預金その他政令で定める預金等を除く」)。預金保険の保険金の対象外。 行4/証券会社に預けた有価証券・金銭/金融商品取引法第43条の2で会社の固有財産と分別して管理する義務(金銭は信託会社等へ信託、第2項/管理状況は公認会計士等の監査、第3項)。分別管理が果たされず返還が滞った場合の受け皿として、同法第79条の56第1項の基金の支払があり、上限は同法第79条の57第3項+金融商品取引法施行令第18条の12により1,000万円。基金への加入義務は同法第79条の27第1項で、政令で定める金融商品取引業者は除かれる。 数値の出どころ:1,000万円(預金側)=預金保険法施行令第6条の3。1,000万円(証券側)=金融商品取引法施行令第18条の12。いずれもe-Gov法令検索の原文で確認。目分量の値は使っていません。

出どころ

  • 預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号) 第51条第1項(一般預金等の定義・括弧書き「外貨預金その他政令で定める預金等を除く」)、第51条の2第1項(決済用預金の三要件)、第54条第2項(保険基準額)、第54条の2第1項(決済用預金に係る保険金の額) 原文
  • 預金保険法施行令(昭和四十六年政令第百十一号) 第6条の3(保険基準額)「法第五十四条第二項に規定する政令で定める金額は、千万円とする。」 原文
  • 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号) 第43条の2(分別管理)第1項・第2項・第3項、第79条の20第1項(一般顧客の定義)、第79条の27第1項(加入義務。「金融商品取引業者(政令で定める金融商品取引業者を除く。)は、いずれか一の基金にその会員として加入しなければならない。」)、第79条の56第1項(補償対象債権の支払)、第79条の57第3項(支払金額の上限) 原文
  • 金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号) 第18条の12(基金による支払の最高限度額)「法第七十九条の五十七第三項に規定する政令で定める金額は、千万円とする。」 原文
  • 金融庁 「預金保険制度」ページ(「定期預金や利息の付く普通預金等(一般預金等)は、預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算され、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます」/決済用預金は全額保護) 原文
  • 日本投資者保護基金 「Q&A」ページ(補償は1人あたり合計1,000万円を上限に金銭で/相場の値下がりや発行体の破綻による不払いは対象外) 原文
  • 預金保険機構 「保護の範囲」ページ(決済用預金は全額保護、一般預金等は1金融機関ごとに合算して預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等、外貨預金は対象外) 原文

法律や制度は変わります。手続きをするときは、上の原文をその時点でもう一度お確かめください。